
FDAのWarning Letterを読むときの注意点
Warning Letter(警告書)は、FDAが特定の施設・製品・行為について重大な違反と考える事項を通知し、是正を求める文書です。警告書だけをもって、裁判で違法性が確定した、すべての商品が回収された、会社が倒産した、という結論にはなりません。
日付、受領者、対象施設、Product欄、引用される21 CFRの条文、FDAが認定・懸念した事実、企業側の回答、後続の是正状況を切り分けて読みます。
Pan-African Food Distributors:保管施設の衛生管理と州当局の命令
FDAは2025年11月13日、Pan-African Food Distributors Inc./East Africa Boutique LLCに警告書(MARCS-CMS 717171)を発行しました。2025年5~6月のケンタッキー州の施設査察では、齧歯類や虫などによる不衛生な保管環境が指摘され、主に21 CFR Part 117(食品のcGMP・予防管理)に関連する問題が扱われています。
警告書は、ケンタッキー州公衆衛生当局が2025年5月12日に施設の操業停止命令を出し、同年9月3日に州の監督下で対象食品や化粧品の自主廃棄を完了したこと、2025年10月31日時点で同命令が継続していたことを記しています。
この事例ではFDAの警告書と州当局の操業停止命令が別々に存在します。「FDAがサプリメント工場に21 CFR Part 111違反だけを理由として全製品の強制回収を命令した」と書くことはできません。2026年1月22日にはFDAも関連製品の消費・使用を避けるよう注意喚起を更新しています。
LXR Biotech:サプリメントcGMPへのFDAの指摘
FDAは2025年12月23日、LXR Biotech LLCに警告書(MARCS-CMS 714568)を発行しました。2025年2~3月の査察を踏まえ、FDAはダイエタリーサプリメントのcGMP(21 CFR Part 111)などに関して違反と判断した内容を具体的に示しています。
原材料・完成品の仕様、検査方法、品質管理の実施や記録など、どの規則のどの義務が問題になったかを警告書原文で確認することが重要です。本記事は当時のFDA指摘を扱うもので、その後の企業の事業状態や違反が続いているかまで判断するものではありません。
Prodrome Sciences:臨床研究とINDの要否
FDAは2026年1月8日、Prodrome Sciences USA LLCに警告書(MARCS-CMS 717959)を発行しました。FDAは同社の研究「ProdromeNeuro: An Open-Label Study of Omega 3 Oil Nutritional Supplementation for Aging-Related Cognitive Decline」を検査し、認知症を伴う対象者での研究目的と評価項目から、研究に用いられたProdromeNeuro Oilを治験薬と判断しました。
FDAは、必要なInvestigational New Drug application(IND、治験薬申請)が有効となる前に臨床試験を開始したとして21 CFR Part 312違反を指摘しています。栄養補助食品として販売される製品であっても、研究で意図する疾病の治療効果によってINDが必要になる場合があるという事例です。
すべてのサプリメント臨床研究にINDが必要という意味ではありません。試験の目的・対象者・主要評価項目・製品の意図する用途から判断し、INDの免除に該当するかも含めて検討する必要があります。
日本企業が防ぐべき3つの混同
食品・サプリメントの保管施設には21 CFR Part 117の衛生管理が問題になる場合があります。サプリメントの製造・包装等には21 CFR Part 111のcGMPが関係します。疾病の治療効果を調べる臨床研究では、21 CFR Part 312のINDが問題になる場合があります。
これらの規則は同じではなく、ひとつの警告書を別の規制分野の典型例として紹介すると読者を誤解させます。自社の製品分類、事業者・施設の役割、試験内容、FDAへの提出義務をまず明確にしてください。
輸出・製造・研究の確認手順
①自社が食品保管、サプリメント製造、輸入、治験スポンサーなどのどの役割に当たるか決める。②適用される21 CFR条文を確認する。③必要な施設登録・製造記録・品質試験・衛生管理を整理する。④広告の疾病効果表現と臨床研究の目的を別々に確認する。⑤問題があれば法令・当局通知・是正措置を記録し、社内で責任者を決める。