
GRASとは何か
GRASはGenerally Recognized As Safe(一般に安全と認められる)の略です。米国の食品・医薬品・化粧品法(FD&C Act)では、食品へ加える物質は原則として食品添加物の市販前審査の対象ですが、特定の用途について資格のある専門家の間で安全性が一般に認められている場合などは、食品添加物の定義から除外されることがあります。
GRASは製品名や原料名だけで一律に成立するものではありません。対象物質の同一性、製造工程、純度・不純物、食品中の用途、使用量、対象消費者、食事全体からの曝露を踏まえて評価します。一般に安全と認められることは、資料の公開性や専門家の合意も関係します。
現行のGRAS通知は自主的な制度
2026年10月時点で、GRASの結論を得た事業者がFDAに通知する制度は原則として自主的な仕組みです。GRASと判断した物質・用途について、通知なしで販売できる場合がありますが、その場合も適用法令と安全性の根拠を満たす責任がなくなるわけではありません。
GRAS通知をFDAに提出した場合、FDAから『no questions』の回答が得られることがありますが、これは通常の食品添加物承認や製品のFDA承認を意味しません。通知を行わずに独立したGRAS結論を得る方式も、FDAによる承認が与えられたわけではありません。
2026年8月にGRAS通知義務化の規則案が公表
FDAは2026年8月10日に、ヒト用食品と動物用食品に使われる一定の物質について、GRAS結論の通知を求める規則案を発表しました。連邦官報への掲載日は2026年8月11日で、ドケット番号はFDA-2025-N-3262です。
FDAは、一定の用途について事業者からFDAへのGRAS通知提出を義務化する案だと説明しています。ただし、この規則は2026年10月18日時点では提案段階であり、現行のGRAS通知がすべて義務化されたわけではありません。意見募集期限は2026年12月9日です。
製品・用途が規則案の対象になるかを判断する際は、最終的な規則が採択されるか、変更されるか、発効日がいつになるかを今後確認する必要があります。
安全性評価と資料の作成
GRASの結論には、用途に対応した科学的証拠が必要です。成分の同一性、製造工程・規格、意図する食品カテゴリー、最大使用量、子ども等の集団への曝露、毒性情報、ヒト試験や動物試験の必要性などを検討します。
原材料を別の製法や微生物株で作る場合、既存の評価資料を無条件に使えるわけではありません。工程変更により物質の同一性や不純物プロファイルが変わる場合には、根拠を再評価する必要があります。
GRASと別制度を取り違えない
GRASの評価は食品添加物の定義からの除外に関する仕組みです。着色料(Color Additive)の事前承認制度や、食品の施設登録・輸入届出、食品アレルゲン・表示規則などを自動的に満たすものではありません。健康効果や疾病治療を示す表示の適法性も別に検討します。
日本や欧州連合の食品添加物制度とGRASは自動的に相互承認される関係ではありません。米国でGRAS結論があっても他国の販売許可を保証しません。
米国市場参入前の確認項目
①物質の同一性と最終製品中の用途・曝露を定義する。②既存のFDA GRAS通知と安全性の根拠を調べる。③資格のある専門家によるGRAS結論が成り立つか確認する。④独立判断・FDAへの通知・食品添加物申請等の経路を比較する。⑤現行の自主通知と2026年の提案規則を分けて管理する。⑥原料・製法変更があった場合は再評価する。
