
疾病効果を示す表示とサプリメントの規制
米国ではダイエタリーサプリメント(dietary supplement)は食品に分類されますが、特定の疾病の診断・治療・治癒・予防を標榜すると、当該製品が医薬品規制の対象になる場合があります。COVID-19を予防・治療できるという説明を掲載した製品は、サプリメントとして販売されていても、FDAによる未承認医薬品の指摘を受ける可能性があります。
FDAのWarning Letter(警告書)、企業の自主回収、連邦裁判所による恒久的差止命令は別の手続きです。当局のウェブサイトに企業の自主回収が掲載されていても、FDAによる強制回収命令とは限りません。対象製品・日付・措置の主体を原文で確認することが重要です。
Golden Nutrition社:2020年の自主回収
FDAが掲載した2020年6月23日付の企業発表によれば、フロリダ州のGolden Nutrition Inc.は「Anti-Viral Immune Enhancement Capsules」の4ロットを自主回収しました。回収理由は、製品ラベルに科学的根拠のない健康効果の主張があったことです。対象商品はプエルトリコで流通していました。
FDAの回収告知ではProduct TypeをFood & Beveragesと表示しています。回収告知の掲載はFDAが当該製品や企業を承認したことを意味せず、FDAが製造停止を命じたことや会社への刑事処分が確定したことを示すものでもありません。製品の回収と当局の命令は分けて理解します。
Natural Solutions Foundation:警告書と裁判所の差止命令
FDAと連邦取引委員会(FTC)は2020年5月19日、Natural Solutions Foundationに警告書(MARCS-CMS 605748)を発出しました。FDAは同団体のウェブサイトに、Dr. Rima Recommends Nano Silver 10 PPMをCOVID-19の予防・治療等に用いる旨の表示があると指摘し、未承認・不当表示の医薬品として問題視しました。
米司法省は2020年11月13日に連邦裁判所へ差止めを求める訴訟を提起したと公表しています。さらに2021年12月28日には、連邦裁判所が同団体および関係者に、COVID-19治療用として宣伝された未承認・不当表示のナノシルバー製品の流通を禁止する恒久的差止命令を下したと発表しました。
これらの一次資料で確認できるのは、警告書、提訴、恒久的差止命令です。「2023年3月にFDAが過去の販売分すべてを強制回収した」「購入者からの回収が完了した」といった別の措置については、該当する一次資料を確認できないため事例の事実として説明しません。
Structure/Function ClaimとHealth Claimの違い
サプリメントのstructure/function claim(構造・機能表示)は、栄養素などが人体の正常な構造や機能に及ぼす役割を説明する表示です。FD&C Act第403(r)(6)条に該当する表示には、科学的根拠、定められた免責表示、初回販売から30日以内のFDA通知などの要件があります。通知をしたことがFDAの事前承認を意味するわけではありません。
FDAが認めるhealth claim(健康強調表示)やqualified health claim(限定的健康強調表示)は、食品・成分と疾病リスクの関係などについて別の規則で扱われます。すべての疾病リスク低減に関する表示が一律に禁止されるわけではありませんが、商品の表示が法定の要件を満たす必要があります。
免責表示を付けるだけで、未承認の疾病治療効果を主張できるようになるわけではありません。商品のパッケージだけでなく、ウェブサイト、ECページ、販売資料、動画なども含め、消費者に伝わる意図する用途を確認します。
FDAとFTCの役割、輸入品への適用
FDAは食品・サプリメントのラベル表示や、表示された意図する用途によって問題となる未承認医薬品などを規制します。FTCは主として広告表示の真実性と裏付けを監督します。オンライン広告での主張がFDA・FTCの両方の問題となる場合もあります。
海外製品についても、米国で適用される成分・表示・施設登録・輸入手続きに従う必要があります。FDAの輸入審査、留置、輸入拒否、輸入警告はそれぞれ別の手続きです。違反があれば常に90日以内の一律廃棄となる、といった説明は適切ではありません。個々の通知で求められる対応を確認します。
日本企業が販売前に確認する事項
①サプリメント、通常食品、医薬品などのFDA上の製品分類。②ラベル・広告の疾病効果表示の有無。③Structure/function claimに必要な科学的根拠、免責表示、30日以内の通知。④原材料・新規ダイエタリー成分(NDI)や製造管理規則の適用。⑤問題が生じた際の広告停止、当局照会への回答、ロット追跡、必要な自主回収の手順。
企業の実名を挙げる事例は、FDA・FTC・司法省・裁判所等が公表した資料の範囲を超えて、刑事罰、回収数量、経営破綻や現在の事業状況を推測しないことが重要です。
