FDA化粧品査察の対象と権限
米国FDAは連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)第704条などに基づき、適用される条件の下で施設を査察します。査察の対象となる記録や手続きは製品分類・施設の業務内容・根拠法令によって異なります。化粧品、OTC医薬品、医療機器を製造する施設では、同じ設備を使っていても適用要件を区別する必要があります。
FDAのForm 483(査察所見書)は査察官が観察した問題点を事業者へ伝える文書であり、それ自体が最終的な違反認定ではありません。公表された指摘事項には事業者の回答や追加の当局判断が続く場合があります。
「5種類の化粧品査察」という一律の法定区分はない
FDAは規制監督の目的で計画的な査察や特定の問題に基づく原因調査、是正状況の確認を行うことがあります。リコールの実施状況の確認や輸入時の貨物審査・サンプリングも重要ですが、これらをすべて化粧品製造施設に対する「5つの法定査察タイプ」と同列に並べることは正確ではありません。
FDAの査察が事前通知されるかどうかは、査察の目的や施設所在地、個別の事情に左右されます。通常は必ず予告される、または原因調査は必ず無予告である、といった一律の表現を前提にせず、常時必要な文書を提示できる状態を整えます。
登録・製品リスティング:VCRPではなくMoCRAを確認
FDAは旧Voluntary Cosmetic Registration Program(VCRP:任意の化粧品登録制度)への新規提出を2023年3月27日に停止しました。したがって、21 CFR Parts 710・720の旧任意登録を「毎年更新すべき現行登録」と案内するのは適切ではありません。
MoCRA(Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022、2022年化粧品規制近代化法)は、一定の化粧品施設の登録と製品リスティングを定めています。施設登録や製品リスティングには小規模事業者等の適用除外と、その例外があります。輸出するすべての施設が無条件で登録義務を負うわけではないため、製品区分と対象施設を確認します。
FDAの現行ポータルであるCosmetics Directなどを利用する場合も、登録番号やリスティング番号をFDAの製品承認と表示してはいけません。
査察に備える記録と社内体制
原料・処方・製造・包装・試験・ロット追跡・苦情・有害事象・回収・表示の各記録について、担当者と保管場所を明確にしておきます。外部製造委託先との品質契約では、どの資料を誰が管理し、FDAからの適法な要求にどう対応するかを整理します。
2026年1月にFDAは、化粧品の有害事象や安全性に関する記録の閲覧・複写権限を解説した草案ガイダンスを公表しました。この文書は草案であり法的拘束力のある確定規則ではありませんが、適用されるFD&C Actの第605、610、704条を把握するための資料になります。
化粧品GMPについてFDAが公表した2013年の資料も草案です。医薬品に適用される21 CFR Parts 210・211をすべての一般化粧品に直接適用できるとする説明は避け、製品分類ごとの法的要件と品質管理上の推奨事項を区別します。
査察中の対応とForm 483への回答
FDA査察官の身分と査察の法的根拠・対象範囲を確認し、事実に基づく回答と、関連する記録の適切な提示を行います。記録の隠匿・改ざんや査察妨害は避け、分からない点は確認してから回答します。社内の品質責任者、法務、製造担当者、通訳等への連絡体制を事前に決めておくと有効です。
Form 483が交付された場合は、観察事項を確認し、原因分析、是正措置、再発防止措置、実施予定日と証拠資料をまとめます。FDAは迅速な書面回答を推奨しており、15営業日以内の回答は当局の評価で重要となることがありますが、すべての化粧品査察で「15営業日以内に改善完了が法律上必須」という意味ではありません。
観察事項への回答だけで案件の終結が保証されるわけではありません。後続の警告書やCloseout Letterなどが公表された場合には、それぞれの発行日と対象事項を確認します。
日本の化粧品企業向け確認項目
①製品がFDA上の化粧品、医薬品、または双方の規制対象か確認する。②MoCRAの施設登録・製品リスティング義務と免除条件を確認する。③製品仕様書、原材料情報、製造工程、試験記録、品質苦情の所在を整理する。④米国代理人(U.S. Agent)、Responsible Person、委託製造者の役割を区別する。⑤査察・輸入審査・回収時の連絡窓口と権限を文書化する。
リコールの準備では製品・ロット・流通先と是正措置の証拠を保持し、FDAの公表文書と自社の記録を対応させます。製造品質の改善は日常業務に組み込むことが重要です。
