
サプリメント規制の基本的な枠組み
米国でdietary supplement(ダイエタリーサプリメント)に分類される製品は、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C Act)とDietary Supplement Health and Education Act of 1994(DSHEA:1994年ダイエタリーサプリメント健康教育法)などに基づいて規制されます。FDAは成分・製造管理・ラベル等を所管し、FTC(Federal Trade Commission:米連邦取引委員会)は主に広告表示の真実性と裏付けを監督します。
健康食品という日本の分類をそのまま米国に持ち込まず、米国での製品形態、表示、対象成分、意図する用途を確認します。疾病の診断・治療・予防に関する主張によって未承認医薬品の問題が生じる場合もあります。
FTCの健康関連製品広告ガイダンスは2022年12月に改訂
FTCは2022年12月20日、Health Products Compliance Guidance(健康関連製品の広告表示に関するコンプライアンスガイダンス)を公表しました。これは1998年のサプリメント向け指針を改訂したもので、サプリメントだけでなく食品、OTC医薬品等の健康関連製品の広告にも幅広く関係します。
FTCは、広告の効能や安全性の主張には事前の十分な裏付けが必要であり、一般に質の高いヒト試験、特に適切な無作為化比較試験を重視する立場を説明しています。ただし、すべての健康表示に必ず同じ件数の臨床試験が必要という一律の基準ではなく、主張の種類や科学的根拠に応じて評価されます。
2023年の約670社への通知は違反認定ではない
FTCは2023年4月、OTC医薬品、ホメオパシー、サプリメント、機能性食品等を扱う約670社に対して、根拠のない効能表示に関するNotice of Penalty Offenses(違反に関する民事罰の可能性を知らせる通知)を送付したと発表しました。
通知を受け取ったことだけで、FTCが当該企業の個別広告を違法だと認定した、罰金を科した、販売を禁止したことにはなりません。将来、法定条件を満たす違反をした場合に民事罰の対象となり得ることを示すものです。罰金上限額は年度により改定されるため、2023年当時の数字を現在の一律の上限として転載しません。
NDI通知:2024年の最終ガイダンスと75日前原則
New Dietary Ingredient(NDI:新規ダイエタリー成分)について、FDAは2024年3月、通知の手続きと審査上の期間に関する最終ガイダンスを公表しました。法定の例外に当たらない一定のNDIを含むサプリメント等は、米国で販売を開始する少なくとも75日前に安全性の根拠をFDAへ通知します。
NDI通知は通常の医薬品承認申請ではありません。FDAが75日以内に異議を述べなかったからといって、製品の安全性や合法性が承認されたことにはなりません。また、1994年以降に流通したすべての原料が一律に通知対象になるわけでもありません。FDAの最終ガイダンスは通知の手続きと期間に関するもので、これを新しい全製品登録制度の施行と取り違えないでください。
成分の適法性とFDAの公式情報
FDAはInformation on Select Dietary Supplement Ingredients and Other Substances(サプリメントに使用される成分等に関する公式情報)を公開し、特定の成分への警告や政策見解を掲載しています。成分の分類や規制上の評価は、名称・用途・化学的同一性・販売表示によって異なります。
例えばチアネプチンやフェニブットなどについてはFDAから注意喚起等が出ています。ただし、別の商品・企業への警告や回収をまとめて「販売業者全社にFDAが同一の処分を科した」とは言えません。個別の回収・警告書を引用するときは、当局文書の対象商品と日付を確認します。
サプリメントcGMPと輸入の準備
ダイエタリーサプリメントの製造・包装・表示・保管には、適用される21 CFR Part 111のcurrent Good Manufacturing Practice(cGMP:現行の適正製造基準)が関係します。原材料の同一性、製品規格、バッチ記録、品質部門の判断、苦情の調査、ラベルとの整合を事業者の役割に応じて管理します。
サプリメントの米国輸入では、食品施設登録、Prior Notice(輸入事前通知)、Foreign Supplier Verification Programs(FSVP:外国供給者検証プログラム)などの適用可否も確認します。登録や書類の提出だけで、FDAが成分・効能・製品品質を承認したことにはなりません。
市場データと行政処分の引用には根拠が必要
サプリメント市場の年間売上、利用者比率、FDAの査察指摘件数、特定の違反類型の増減率は、対象範囲と集計年度を明示しなければ意味が変わります。根拠資料を確認できない統計や、企業の処分・倒産に関する未確認の説明を事実として扱うことは避けます。
FDAのWarning Letter、企業の自主回収、輸入警告、FTCの民事命令、司法省の刑事処分は法的性質が異なります。事例を紹介する際は文書番号・対象商品・発行日・その後の措置を分けて確認します。
日本事業者の実務チェック
①米国での製品分類を確定する。②原材料・NDI通知の要否と安全性の根拠を確認する。③21 CFR Part 111の適用範囲と製造記録を整備する。④ラベルとEC・SNS・広告の表示をFDA・FTCそれぞれの基準で評価する。⑤米国輸入の施設登録・事前通知・輸入者検証義務を判断する。⑥変更のあった法令・FDAガイダンスのみを更新し、未成立の法案や提案を既存の義務と混同しない。